Ameba20周年記念|鏡リュウジが伝える占星術における20年
Ameba 20周年、まことにおめでとうございます!
この激しい変化の時代の中で、20年、何かが続いていくということは本当に素晴らしいこと。心からお祝いしたいと思います。そして、ぼくもそのお仕事の一端に関わらせていただいていることを、深く感謝しております。
占星術における20年とは
ところで、この「20年」というのは占星術の伝統でも大変に重要な期間なのです。
今日はここで、占星術における「20年」について少しお話できればと思います。
占星術は徹頭徹尾、サイクルを考えるアートです。1日24時間という、地球の自転運動。28日の月の周期。さらに1年365日と4分の1の地球から見た太陽の1周。火星は2年半、木星は12年、土星はおよそ30年といったサイクルで運行しているわけですが、その星たちの巡りが地上におけるさまざまなものの生成消滅とシンクロしていると考えるのです。
ただ、占星術で用いている惑星の中では「20年」にぴったり当てはまるものはありません。
それにも関わらず、「20年」は1000年以上前から占星術では特別な期間だと考えられてきました。
その秘密は、木星と土星のサイクルにあります。20年という数字は、木星と土星の周期から導きだされるものだからです。18世紀までは、天王星(公転周期84年)や海王星(公転周期165年)などはまだ発見されていませんでしたから、近代以前の天文学者、占星術家が知っていた最大の公転周期をもつ惑星は木星と土星でした。先にも述べたように木星は公転周期がおよそ12年。一方、土星は約30年の周期でホロスコープを巡っています。
そしてこの木星と土星が接近するのがほぼ20年なのです!
ではなぜ、木星と土星の接近が重要視されたのか。木星は、太陽系最大の惑星であり、占星術では「大吉星」と呼ばれています。木星は人を楽観的にさせ、今、ここではないものに目を向けさせようとします。新しい地平を、そして次のステージを準備してくれ、可能性を開いていってくれる星が木星です。
よく、SNSなどで、「今年は◯◯座にとって12年に一度の幸運期」などという表現を見ることもあるかと思いますが、そのとき、これは木星が入っている星座のことを指します。木星は12年ごとに1年の間、一つの星座を通過していきます。例えば今は木星が双子座に入ってますから(2024年9月現在)双子座の人が幸運のときとなるわけですね。また12の倍数の年は日本では「歳女」「歳男」になるわけですが、これは占星術的には木星が生まれたところの位置に戻ってくるタイミングとなり、その年の主役となるわけです。
一方で土星は現実と、現実を生み出すための試練の星で、「大吉星」の木星に対して伝統的には「大凶星」と呼ばれていました。木星が「もっともっと可能性があるよ」というのにたいして、土星は「これ以上はもうだめだ、現実を見よ」と迫ってくるのです。土星の公転周期は29年半から30年くらいですから、誰でも30歳手前で、土星が自分の生まれたところの位置に戻ってきます。これを「サターン・リターン」といい、占星術上での成人式だと考えていいでしょう。論語では「三十にして立つ」といいますが、精神的に自立して、完全に成人の世界に入っていくときになるのです。拡大と発展の木星と制限と現実の土星、この二つのバランスが社会の歯車を回しています。そしてこの二つの星のリズムが、1世代を創り出し、社会構造の大きな変化のタイミングのシグナルとなると考えられてきました。
占星術ではこの土星と木星をとくに「黒のクレーター」(時間を作るもの)と呼ぶほどです。実際に木星と土星が接近する時は社会の一つの節目となるとされていますが(2000年、2020年といった年がそうでした)、木星と土星がぴったり重なる年ではなくとも、20年というサイクルは木星と土星が生み出すリズムであることに変わりはなく、一つの大きな節目となっていくわけですね。
面白いことに、日本における事実上の「成人」年齢もそうですし、伊勢神宮などの「遷宮」のときもそうですね。20年経つと0歳だった子どもが20歳になります。ひとつの世代が入れ替わっていくのです。
これはやはり大きな節目です。そしてそのときには、今までのことを振り返って現実を厳しく見つめて今の自分の限界を知り(土星)、その上で、新しいステージを志して夢を広げていくときにあたるわけです。
このAmeba20周年のタイミングに、20年を一つの物差しとして、私たち自身の人生を振り返り、今の状況を指す伏線がなかったか、答え合わせを試みるのもいいのではありませんか?
監修者紹介
心理学的アプローチをまじえた占星術を日本で紹介することによって、占いマニア以外の人にも幅広くアピールすることに成功。
占星術の第一人者としての地位を確たるものとし、 一般女性誌の占い特集では欠くことのできない存在となる。
また、大学で教鞭をとるなど、アカデミックな世界での占星術の紹介にも積極的。
著書『魔法の杖』シリーズが100万部突破のベストセラーに。
ユング派心理学者の著書翻訳など硬派なものから、占い実用本まで幅広く出版している。著書訳書あわせて100冊以上。直木賞作家角田光代氏とのコラボなど、異色な本も。1968年、京都生まれ。心理占星術研究家・翻訳家。
国際基督教大学卒業、同大学院修士課程修了(比較文化)。
・英国占星術協会、英国職業占星術協会会員
・日本トランスパーソナル学会理
・平安女学院大学客員教授
・京都文教大学客員教授
・趣味は料理と古書蒐集。好きなものは赤ワインと肉、イギリス。